記念すべき最初のMAN-MADE OBJECTは何にしようか案の定悩んだが、やはり今自分のなかで熱いものの中から選ぶべきだろうと思いこのAdam Silvermanを選んだ。
彼の作品との出会いはプレイマウンテンをオープンして間もなく、LAに出張で行った際にLarry Schifferがオーナーのインテリアショップ「OK」で目にしたのが最初。イームズから始まったミッドセンチュリーデザインのブームの真っただ中、言うまでもなくLAにおいてもその熱は最高潮のとき。そんな中でみたADAMの器の印象は正直その風潮を表しているかにも見えたのだが、ただその器の姿にはまだ完成はされていないけれどもある深いルーツを感じさせるものがあった気がする。
1950年代にアメリカで活躍したGertrud & Otto Natzler(ゲルトルド & オットー・ナツラー)やEdwin & Mary・ Scheier (エドウィン&マリー・シャイヤー)、イギリスで活躍したLucie Rie (ルーシー・リー)、Hans Coper (ハンス・コパー)の影響がうかがえるそのフォルム、釉薬の施し方は魅力あるスタイルである。器の表面はごつごつしてまるで噴火口のような仕上げで、まさに人間の手で形作られた器を窯の中で焼く、つまり人の手の加えようのないところで仕上げを加えられたその姿は彼自身の経験からのディレクションはあるにせよまさに人の手を越えたオブジェクトとして出現する。ただ彼の作品の良さはそこにだけある訳ではないことがあとでさらに分かることになる。それは彼の陶芸を本格的に始めるまでに至る彼の過程にある気がしてならない。
Adamは東海岸で建築学も学んだあと建築士となる、その後90年代に入ってビースティ・ボーイズのマイクD、同級生であったイライ・ボナーツとともにXLARGE(R)というファッションブランドを始めることになったことが大きな転機となる。彼はそのビジネスの成功の後に大学時代に専攻し経験のあった陶芸の活動を本格化させることになる。ただその間に出会った人々からの影響は先に述べた偉大な陶芸家に勝るともおとらない影響を与えたのではと考えられる。
今現在も彼の活動は一人の陶芸家としては異色であり、日本では村上隆、奈良美智との交流が彼にとって刺激あるものとなっているようである。そうした過程の中で得たものを作品として生み出すadam silvermanの器はまさにMAN-MADE OBJECTとしてふさわしいものである。
Text by Shinichiro Nakahara
Adam Silverman
ATWATER POTTERY
彼の作品をリンク先のホームページで見ました。勇気が出ました。魅力のある人を、紹介してくれてどうもありがとうございます。