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海外のヴィンテージ家具を扱うSHOPやフリーマーケットなどに行った際に必ずといっていいほど買うものがある。それはWOOD BOWL。つまり木製の器なのだが、 この世に数多く存在するWOOD BOWLの中にはとても興味を惹くものが存在する。とくに1940年代ころから1970年代にデンマークやドイツ(当時の西ドイツ)そしてアメリカなどで作られたものに心惹かれるものが多い。素材は主としてチーク材、マホガニー材、ウォールナット材(ブラックウォールナット、クラロウォールナットなど最高の素材のものはさらに良い)、ゼブラウッドなどを使ったもの。僕が好きな作家はBob Stocksdale(USA),James Prestini(USA),David Ellsworth(USA), Jens H. Quistgaard(Denmark)などなど(ただし現在では入手しにくい価格となってしまっている)。特にDavid Ellsworthのものはどっしりとしていて僕の好みである。彼がペンシルヴァニア州の彼のスタジオでワークショップをやってると最近知り体験しにいこうかと思っている。彼オリジナルの道具も販売していると聞いては黙ってはいられない。相当なお年だろうしはやく実現したいことのひとつでもある。

もちろん作家ものでないものでも好きなBOWLは沢山ある。ただ素材は似ているがハワイ土産屋売っている類いのものはちょっとアウトで、ある見分けるべき観点は存在する。もしかすると女性で籐のバスケットを集めている人を見かけるが、ある種この集めてしまう感覚は似ている部分もある気がする。でもこの観点はデザイナーが考えたものだからとかKay Bojesenのものだからとかだけが判断基準ではない気がする。そのフォルムと素材が見た目のすべてではあるのだけれども、それだけでは言い表せられない良さがあるBOWLが存在するのである。BOWLとしての存在感だけでなくOBJECTとしての存在感があると言ったら良いのか分からないが、、、

とにかくある程度多くの種類を見ていかねばこの見分けはつかないだろう。言えば単なる木のボウルではあるのだから。集めている形の中で多いのがいわゆるバタフライボウルと呼ばれるもので、薄く挽いてあるボウルで横から見ると両サイドが釣りあがってみえるタイプのもの。この形は同年代の陶器類(特に北欧の作家ものによく見受けられる。たとえばGunner Nylundなど)にもよく見受けられるもので当時のある種、はやりのフォルムだったようである。思うにこれらの中にもアノニマスデザインとして評価されるべきものもあるのでは、と僕は思う。

そして、この集めたWOOD BOWLをどう使うのかであるが、もちろん生活の中の食のシーンで使うのも良いし、Adam Silvermanの陶器のようにキャビネットなどの上に置いて飾るのにもよい。これらのWOOD BOWLの魅力を感じてもらうためにも一度検証しなおして皆さんに見てもらう機会をつくりたいと思っている。近年はなかなか良い物が見つかりにくいので苦労するとは思うが、、、

Text by Shinichiro Nakahara

http://www.ellsworthstudios.com/david/schoolwood.html
http://www.mintmuseum.org/mason/masonsite/stocksdale.html
http://www.mintmuseum.org/mason/masonsite/prestini.html

July 30, 2006 5:31 PM | | Commnets (1) |

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記念すべき最初のMAN-MADE OBJECTは何にしようか案の定悩んだが、やはり今自分のなかで熱いものの中から選ぶべきだろうと思いこのAdam Silvermanを選んだ。
彼の作品との出会いはプレイマウンテンをオープンして間もなく、LAに出張で行った際にLarry Schifferがオーナーのインテリアショップ「OK」で目にしたのが最初。イームズから始まったミッドセンチュリーデザインのブームの真っただ中、言うまでもなくLAにおいてもその熱は最高潮のとき。そんな中でみたADAMの器の印象は正直その風潮を表しているかにも見えたのだが、ただその器の姿にはまだ完成はされていないけれどもある深いルーツを感じさせるものがあった気がする。

1950年代にアメリカで活躍したGertrud & Otto Natzler(ゲルトルド & オットー・ナツラー)やEdwin & Mary・ Scheier (エドウィン&マリー・シャイヤー)、イギリスで活躍したLucie Rie (ルーシー・リー)、Hans Coper (ハンス・コパー)の影響がうかがえるそのフォルム、釉薬の施し方は魅力あるスタイルである。器の表面はごつごつしてまるで噴火口のような仕上げで、まさに人間の手で形作られた器を窯の中で焼く、つまり人の手の加えようのないところで仕上げを加えられたその姿は彼自身の経験からのディレクションはあるにせよまさに人の手を越えたオブジェクトとして出現する。ただ彼の作品の良さはそこにだけある訳ではないことがあとでさらに分かることになる。それは彼の陶芸を本格的に始めるまでに至る彼の過程にある気がしてならない。

Adamは東海岸で建築学も学んだあと建築士となる、その後90年代に入ってビースティ・ボーイズのマイクD、同級生であったイライ・ボナーツとともにXLARGE(R)というファッションブランドを始めることになったことが大きな転機となる。彼はそのビジネスの成功の後に大学時代に専攻し経験のあった陶芸の活動を本格化させることになる。ただその間に出会った人々からの影響は先に述べた偉大な陶芸家に勝るともおとらない影響を与えたのではと考えられる。

今現在も彼の活動は一人の陶芸家としては異色であり、日本では村上隆、奈良美智との交流が彼にとって刺激あるものとなっているようである。そうした過程の中で得たものを作品として生み出すadam silvermanの器はまさにMAN-MADE OBJECTとしてふさわしいものである。

Text by Shinichiro Nakahara

Adam Silverman
ATWATER POTTERY

http://www.atwaterpottery.com

July 18, 2006 6:54 PM | | Commnets (1) |

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Gyorgy Kepesの著書で「man-made object」という本がある。
ランドスケープロダクツの活動のコンセプトであるこの名はここからとったものである。そもそもこの本を知ったのはモダンエイジギャラリーで働いていた頃だから10年くらい前になる。オーナーの高坂さんが良い本だからと説明をしてくれ、目を通してみたが今までに見たことのないタイプの書籍で正直ピンとこなかった。でも何かその編集の方法、とくに写真の内容が非常に印象には残っていた。独立してアメリカ横断買い付けツアー(Donald Juddツアーとも言えたが)した際にメンフィスちかくのKnoxvilleという土地でたまたま入った古本屋でこのシリーズを大量発見。いつかこの本を深く理解せねばらならいと自分で決めていた自分にとってよいタイミングの再会であった。それからの活動の上でこのシリーズがいろんなコンセプトを決める際やビジュアルを考える際に重要な役目を果たしている。なかでもこの「MAN-MADE OBJECT」は会社的にも個人的にも特別な思いのある本である気がする。

このGyorgy Kepesは1906年ハンガリー生まれで、バウハウスの講師で後にシカゴに移動したモホリナギを追って1937年にアメリカに渡り、シカゴのNewバウハウスのカラー部門へ行くことになる。その後1946年にケンブリッジのマサチューセッツ工科大学(MIT)へ移る、そこで、彼は1974年まで視覚のデザインを教える。彼はアメリカの画家、デザイナー、カメラマン、先生とデザインの多くの領域にかなりの影響を及ぼした作家。1966年にこの「MAN-MADE OBJECT」を含む「VISION+VALUE」という数冊からなるシリーズ本を出版している。(この「VISION+VALUE」シリーズは伝説のASPEN MAGAZINEというシリーズの中にもその出版を記したチラシが入っていた)

「MAN-MADE OBJECT」の内容はというと、タイトル通り「人の作ったもの、人造物」であるが、単にアフリカ民族のつくった道具などのハンドメイドのものだけを差しているのではく、冷蔵庫や大量生産物も含んでいるし、イームズの椅子なども含まれていたりする。人が想像し機械を駆使したりして作っているのではあるが、その完成品は何か人の作った物を越えているようにさえ見えてくる。まるで自然のいたずらでそうなっているのかと思わされたり、そのもの自体の機能性は別としてそのフォルムからして何か別の存在に見えてくるのである。柳宗理が提唱するアノニマスデザインという無意識の美を見いだす考えがあるが、このMAN-MADE OBJECTで選ばれているものにはこのアノニマスデザインとして選ばれるものとも比較的同じものがあったりするのも興味深い所である。

これから始めるこのコーナー「MAN-MADE OBJECTS」ではランドスケーププロダクツが考えるマン-メイド・オブジェクツをいろんなエピソードを含めて紹介してこうと思います。

Text by Shinichiro Nakahara

MAN-MADE OBJECT
Gyorgy Kepes
1966年George Braziller 出版

現在絶版
Not for sale

July 11, 2006 8:50 PM | | Commnets (0) |